2013年07月05日

ナン・ゴールディン「性的依存のバラード」

 森美術館の「LOVE展」で、久しぶりにナン・ゴールディンの出世作「性的依存のバラード」に出会った。このシリーズは元々スライドショー形式で発表されたもので、私は1985年にNYニューヨークのICP(International Center of Photography)で10人足らずの観客と一緒に観賞した。時間軸にそってイメージを映し出すパフォーマティブなもので、ナン・ゴールディン自身が選んで、つなぎ合わせたロックやポップス系の音楽に乗せてスライド・プロジェクターを操作するという、今から考えればロウテクで、一回性や偶然性を許容するイベント的な作品だった。音楽の選択も良かったし、映し出されるスナップショット写真の数々は具体的なストーリーがないのにかかわらず、矛盾するかも知れないが、具体的な関係性について物語っている。実際、その年のヴィレッジ・ヴォイス紙のベスト10映画の一つとして選ばれている。厳密には映画作品ではないのだが、その辺がヴィレッジ・ヴォイスっぽい。80年代半ばといえば、ニューヨークのアートシーンにおいては西欧男性中心主義が相対化され、様々なマイノリティー(人種、性別、セクシュアリティー)の表現がメインストリームに登場し始めた頃である。美術表現、はたまた一般的な社会通念として強さ(強度)、独立心、自律性といった価値観が重んじられるアメリカで、それとは正反対の依存する関係やヴァルネラビリティを赤裸々に、そして愛情深く表現しているこの作品が与えた衝撃とインスピレーションはその後のナン・ゴールディンの成功を決定づけたと言える。cookie Mueller.jpg
posted by ミツオ at 12:01| Comment(0) | 日記
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