2012年01月12日

生誕100年ジャクソン・ポロック展

 日本では印象派を中心にヨーロッパの近代以降の芸術がかなりの頻度で紹介される一方、アメリカの芸術については露出度が限定的である。そんな中、戦後アメリカン・アートの方向性を決定づけたアーティスト、ジャクソン・ポロックの回顧展がようやく日本に上陸しました。日本の現代美術市場にとって遅れてきた黒船ショックになるのか?興味をそそる所である。イベントとしての付加価値を高めるためポロックの「生誕100年」を謳った今回の展覧会ではあるが、1998年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催されたものがベースになっていることは間違いない。それから既に10年以上の歳月を経ての日本上陸となった訳である。

 現代アートのわからなさを言い表す時、ピカソのデフォルメされた人物やポロックのキャンバスに絵具を垂らしただけの抽象絵画が引き合いに出される。「子どものいたずら書きとどう違うの?」という訳ある。実際ポロックが初めてニューヨークの大手美術雑誌に登場した時は、「ポロックはアメリカで最も偉大な画家か?」という見出しがついた。?マークが付いていることから窺がえるように、そこには単なる賞賛ではなくシニカルな意味が込められていたのである。しかしながら近年、ポロックの「No.5 1948 」という作品がピカソやゴッホ作品以上の世界最高値の165億円で売買されたことは記憶に新しい。戦後のアメリカ美術はジャクソン・ポロックの登場を契機に、インターナショナル・スタイルとして自らを定義することで、芸術の中心をパリからニューヨークへ移動することに成功した。それに対する一つの歴史的評価が今日ポロックの作品に最高値をつける根拠になっているのだろう。こうしたことから芸術/アートとは全ての「価値の生産」について根源的な問いかけを示唆するものであるだろう。今回のポロック展、様々な切り口からのアプローチが可能であるという意味で、興味深い展覧会である。アメリカ美術の再評価、及び現代アートへの再認識が促される成果を期待したい。
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2012年01月06日

すべての僕が沸騰する 村山知義の世界

すべての僕が沸騰する
村山知義の世界

 過去の積み重ねを評価して行く作業は地味で忍耐のいる仕事だ。特に今日もてはやされる一瞬の盛り上がりが全ての「イベント主義」がはびこる美術界において、近代美術史の検証を地道に続ける神奈川県立近代美術館の取組みは貴重である。葉山館の次回展「村山知義の宇宙」は日本の近代美術史の検証という意味で楽しみな展覧会である。

 村山知義 (1901-1977) はベルリンでダダ、未来派、構成主義などの新興芸術を吸収して1923年帰国した。その後、マヴォ(Mavo)」や「三科」といったグロープの活動を通じて日本の近代美術に決定的な影響を与えた。村山知義は美術だけに留まらず、小説家、デザイナー、劇作家等々の多面的かつ横断的な創作活動を展開した。この展覧会は村山知義の宇宙的な多様性を紹介する、始めての大規模な個展である。

 世界史的転換期にある現在にとって示唆に富む展覧会になるだろう。
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ベン・シャーン:クロスメディア・アーティスト展

ベン・シャーン:クロスメディア・アーティスト展

 私の2012年始めの展覧会訪問は神奈川県立近代美術館葉山で開催されているベン・シャーン展から。晴天の4日の午後、葉山の海岸通りを走るバスに揺られ、海の景色を眺めながら美術館に向かった。葉山館は小さな美術館ではあるが、毎回しっかりとした展覧会を開催するので評価が高い。その上相模湾を見渡す美術館の周囲の環境も素晴らしく、「バスに乗って」まで行く価値は充分にある。

 ベン・シャーンは世界恐慌時代のアメリカ(ニューヨーク)でアーティストとしての地位を確立した社会派の画家として知られている。今回の展覧会では副題にもなっているように絵画作品だけでなく、写真やポスターなどベン・シャーンの多様な表現メディアの広がりを紹介している。特に複数の写真の中のイメージを、例えばこの写真からは人物、あの写真からは背景といった具合に、組み合わせて一つの絵画作品にまとめ上げていく過程が分かって興味深かった。写真というメディアの独自性を尊重しつつ、写真から抽出したイメージを絵画作品において再文脈化し、更なる物語性を生み出している。

 ベン・シャーンの作品には「不安の時代」に生きるアーティストの社会的役割など、日本の今日的な問題意識と通じるものが多く見て取れるだろう。       

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